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AWS Cloudformation ベストプラクティス まとめ

1. はじめに

AWS CloudFormation は、AWS リソースをコードとして定義し、Infrastructure as Code (IaC) を実現するためのサービスです。文書管理+検索サービスを提供するうえでは、多様なAWSリソース(例: Amazon S3、Amazon DynamoDB、Amazon OpenSearch Service、Amazon EC2、IAM など)を利用することが多く、これらを効率よく管理するために CloudFormation は欠かせない存在となります。 本ドキュメントでは、主に以下のような運用管理を想定しています:

  • 文書保管のための S3 バケットや、ドキュメントメタデータを管理する DynamoDB テーブルの管理
  • 検索基盤としての Amazon OpenSearch Service (旧 Elasticsearch Service) の構築・更新
  • CloudFormation テンプレートのバージョン管理・変更管理
  • 変更差分やスタックドリフトの検出
  • 運用・保守プロセスの自動化 (CI/CD パイプライン連携など)

以下の各項目で、AWS CloudFormation のベストプラクティスを踏まえ、運用に役立つポイントを解説します。

2. テンプレート設計と管理のベストプラクティス

2.1 テンプレートを小さく保つ (モジュール化 / 階層化)

  • ポイント: 巨大なテンプレートひとつにすべてのリソース定義を入れると、保守が困難になります。
  • 実践例:
  • 「文書管理用のS3、DynamoDB、IAMロール」などの基盤層と、「OpenSearch Service、ロードバランサ、アプリケーション設定」などを別々のテンプレートに分割する。
  • Nested StacksCross-Stack References を使い、論理的に関連するリソースをまとめて管理する。

2.2 テンプレートの再利用性を高める

  • ポイント: パラメータやマッピング、Conditions を活用して、同一テンプレートで複数の環境(Dev/Staging/Prod)を構築できるように設計する。
  • 実践例:
  • 「S3 バケット名」「OpenSearch ドメイン名」「DynamoDB テーブル名」をパラメータ化する。
  • 環境別に異なる AWS アカウントを利用する場合でも、必要な IAM Role / Policy を統一的に記述しつつ、パラメータで差し替え可能にする。

2.3 テンプレートのバージョン管理

  • ポイント: テンプレートはコードとして Git や CodeCommit などで管理し、変更の履歴や差分を追跡できるようにする。
  • 実践例:
  • CloudFormation テンプレートに変更がある場合は、Pull Request (PR) やコードレビューを通じて運用チーム同士で確認する。
  • テンプレートの変更がサービス全体にどのような影響を及ぼすかを事前に把握するため、ステージング環境でテストデプロイを行う。

3. デプロイと更新管理

3.1 継続的インテグレーション / デリバリー (CI/CD)

  • ポイント: コード化された CloudFormation テンプレートを、AWS CodePipeline や GitHub Actions、その他のCI/CDツールと連携して自動デプロイを行う。
  • 実践例:
  • 変更がプッシュされたらテスト環境へのデプロイが自動実行される仕組みを構築し、テスト後に承認を得て本番へロールアウトするワークフローを確立する。
  • OpenSearch Service のバージョン更新なども事前にステージングで検証し、本番環境へのリスクを最小化する。

3.2 変更セット(Change Sets) の活用

  • ポイント: スタック更新前に、どのリソースがどのように変更されるかを事前に確認できる。
  • 実践例:
  • DynamoDB テーブルの設定や OpenSearch Service のパラメータを更新する場合に、Change Set を利用してどのリソースが置換 (replacement) される可能性があるかを確認する。
  • 予期しないダウンタイムを回避するためにも、Change Set を利用して安全策を講じる。

3.3 ロールバックとバージョン復旧

  • ポイント: 更新作業中にエラーが発生した場合、自動ロールバック機能によって以前の状態に戻すことが可能。
  • 実践例:
  • 新しいバージョンの OpenSearch Service ドメインが不安定だった場合、ロールバックですぐに安定バージョンに戻す。
  • ロールバックが完全には成功しないケースもあるため(例: 手動操作が必要な外部システムとの依存関係など)、手順書にロールバックプロセスを整理しておく。

4. セキュリティ・運用上のベストプラクティス

4.1 Stack Policies の活用

  • ポイント: CloudFormation が特定のリソースやリソース属性を更新できないように制限する仕組み。
  • 実践例:
  • 誤って既存の S3 バケットや DynamoDB テーブルを削除してしまう事故を防ぐため、Stack Policy で Delete を禁止する。
  • 変更したい時には一時的にポリシーを解除し、変更後に再度厳格なポリシーに戻す運用ルールを設ける。

4.2 IAM ロールとアクセス権限の最小化

  • ポイント: CloudFormation が実行時に使うロールには必要最低限の権限のみを付与する。
  • 実践例:
  • OpenSearch へのアクセス権限、S3 バケットへの書き込み権限などを細かく制御し、不要なリソースへのアクセスは制限する。
  • 誤ってデプロイ先リージョン以外のリソースを操作しないようにポリシーで制限しておく。

4.3 ドリフト検出(Drift Detection)

  • ポイント: Stack の外部でマニュアル変更(コンソール、CLI など)を行った場合に、CloudFormation テンプレートとの差異を検出する機能。
  • 実践例:
  • 運用で「ちょっとコンソールから S3 バケットの設定を変更した」というケースを可視化し、テンプレートとの不整合をなくす。
  • 定期的にドリフト検出を実行し、手動変更があればテンプレート側を追随させる運用フローを確立する。

5. 運用時の注意点とトラブルシューティング

5.1 スタックの依存関係に注意

  • ポイント: Nested Stacks や Cross-Stack References を利用する場合、スタックの削除や更新時に依存関係が複雑になることがある。
  • 実践例:
  • OpenSearch Service をホストしているスタックが、IAM ロールやログ用の S3 バケットを別スタックから参照している場合、削除や更新の順序に注意する。
  • 依存関係を明確化し、トラブルが起きた場合の切り分けを容易にする。

5.2 リソース固有の制限や特性を把握する

  • ポイント: CloudFormation で管理対象の各 AWS サービス(特に OpenSearch Service や S3、DynamoDB)には、それぞれ固有のクォータや制限がある。
  • 実践例:
  • DynamoDB でテーブルを更新する場合、一部のパラメータは置換(リソースの再作成)が必要になることがある。
  • OpenSearch Service ドメインのバージョン更新が長時間かかる場合や、中断できない場合に備えた計画を立てる。

5.3 ログとモニタリング

  • ポイント: CloudFormation のイベントログや CloudTrail、およびサービス固有のログ(例: S3 アクセスログ、OpenSearch のログ)を活用して問題箇所を特定する。
  • 実践例:
  • デプロイ時にエラーが発生した場合は、CloudFormation のイベントタブでどのリソースが原因かを確認する。
  • スタック全体の更新が成功しても、OpenSearch 内のインデックス作成やアクセスコントロール設定が失敗しているケースがあるため、CloudTrail やサービスログで確認する。

6. まとめ: 文書管理+検索サービスにおける運用最適化

  1. テンプレートのモジュール化 文書管理に必要なストレージ (S3 / DynamoDB) 用テンプレートと、検索基盤 (OpenSearch Service) 用テンプレートを分割し、メンテナンス性を高める。

  2. ステージング環境でのテスト OpenSearch のバージョンやパラメータ変更などの影響を、まずステージングで検証してから本番に適用する。自動化 (CI/CD) を組み合わせて、リリースをスムーズにする。

  3. Change Set やドリフト検出を活用 事前にどのリソースが変更されるか、手動変更の有無などを把握し、サービスダウンや予期せぬリソース削除を防止する。

  4. Stack Policy や IAM ポリシーによるリソース保護 重要なデータを保持する S3 や DynamoDB に対して誤操作を防ぐためのルールを設定し、安全な運用を徹底する。

  5. ログ監視とトラブルシュートの明確化 CloudFormation イベントや CloudTrail、CloudWatch Logs を定期的に確認し、問題の早期発見と対応を可能にする。

これらのベストプラクティスを組み合わせることで、文書管理+検索サービスの信頼性と運用効率を高めることができます。AWS CloudFormation の機能を使いこなし、自動化と可視化を推進することで、チーム全体の生産性向上と品質確保が見込めます。

参考リンク